sixqueens’s blog

コンピュータ、読書、語学学習、ゲーム、資産運用等に関する雑記を書きます。

熊が残した痕

2025年も終わりを迎えつつある。

本年の世相を表す「今年の漢字」として、「熊」が選ばれた。

 

熊と聞くと、熊本を思い出す。

熊本といえば、熊本の狂犬、井芹仁菜が世間を騒がせていた。

 

井芹仁菜は、東映アニメーションのオリジナルアニメ作品、「ガールズバンドクライ」の主人公だ。

私にとって、2025年はガールズバンドクライの影響を受けた1年であった。

 

ガールズバンドクライは、神奈川県の川崎周辺でバンド活動を行う少女たちを描いた作品だ。

主要キャラは3DCGで描かれており、作中で活動するトゲナシトゲアリというバンドが、現実でもバンドとして活動する点が特徴的だ。

 

1話は井芹仁菜が川崎駅前で「空の箱」を歌うシーンで幕を閉じる。

降り注ぐ雨雫や、モザイク調のガラスに反射する光の美しさに目が奪われ、1話を観た段階で、この作品が持つ他の作品には無いものを感じた。

 

1話の後も、2話ごとにライブシーンが用意されており、これらは全てYouTubeに公開されている。ネタバレを気にしない人は、ライブシーンのみを先に楽しむこともできる。

 

3DCG作品と聞くと、まず嫌悪感を抱く人がいるだろう。私もその1人であった。

だが、この作品では嫌悪感や違和感を覚えることなく、13話連続で視聴することができた。これは「イラストルック」という技法が功を奏した結果であろうか。

この作品の中で採用された技術の詳細については、公式本で解説がなされている。興味がある方はぜひこの本を手に取ってほしい。

 

そして、ガールズバンドクライは、ただCGが綺麗なだけの作品でもなく、初見では気が付きにくい演出や造形にも、細かな工夫が施されているように感じた。

これにはライブ会場に羽ばたく鳥の数や、最終話のOPにのみ追加される特殊カット絵、振動する楽器の弦、指ごとに異なるマニキュアの色等、様々な例があるが、詳細は各々で見つけてほしい。

 

話が少し脱線するが、何度も作品を観るたびに、新しい発見を得られる作品がかつて存在していた。

それは今から遡ること十数年前の 2008 年に P.A.WORKS によって製作されたオリジナルアニメ作品、「true tears」だ。

 

この作品も何気なく見ているだけでは気づけない描写が数多く含まれていた。湯浅比呂美という主要キャラが富山の狂犬と称されていた点でも、ガールズバンドクライと共通したものを感じた。

この作品には熱狂的なファンが存在し、このファンの一部は15年以上の年月が経過した今でも、続編を待望していると聞く。

 

true tears の OP では、各キャラクターの視線を媒介して映像が切り替わっていく演出が採用されていた。

視線に着目して、ガールズバンドクライのバンドシーンを見てみると、各メンバーは演奏中の手元に視線を向けるだけではなく、観客や他のメンバーに視線を向けるような仕草をしていることに気が付いた。

後半のライブシーンになるにつれて、このような仕草が目立つようになるのも、メンバーが成長したことを示唆する演出なのであろうか。

カメラの位置と、キャラの視線を用いた演出を加えられることは、3DCGを用いることによる利点なのかもしれないと思った。

 

ところで、これまでCGと演出について述べてきたが、トゲナシトゲアリがアニメ作品の中で歌う楽曲の歌詞の内容に惹きつけられるものがあった。

30以上の曲がリリースされているが、以下のような主張が歌詞に込められた楽曲が多い。

  • 周囲の人々が持つ「普通」「正しさ」に対する違和感
  • 体制に迎合できない自身を肯定し、自身にとっての「正しさ」の追求

 

これらの主張がトゲとなり、社会にうまく馴染めなかった経験を持つ人々の心に刺さる。

特におすすめしたいのが、以下の2曲だ。

いずれの楽曲も、歌詞だけでなくMVも含めて楽しめる。

  • 傷つき傷つけ痛くて辛い
    「誰が決めつけた正解を壊すには長い時間がかかるけど」という一節が特に印象に残った。惰性によって正解とされているルールを正しく壊すには、時間と労力を伴うことが多いことを日々実感している。

    この曲のMVでは、体制側の人間は謎のマスクを身に着けているが、これがガンダム作品を想起させる点も良い。
  • ダレモ
    「孤高に咲く花 ~ 有象無象 勝手にどうぞ」の箇所が押韻を含めて特に印象に残った。
    「UZO MUZO KATTENI DOUZO」の精神を見習って生きていきたいと感じた。

 

トゲナシトゲアリのCDは色々出ているが、2025年12月時点では以下のアルバムを買うことで主要な曲が手に入る。

  • 棘ナシ
  • 棘アリ
  • 小指立てませんか
  • 全部をさらして生きてやる

 

ダレモを始めとする上記に含まれていないシングル曲や、Instrumental版が聴きたくなった場合はシングル曲を買うと良い。小指立てませんかの収録曲のInstrumental版が聴きたい場合は、アニメBDを全て買うことでこれらを手に入れることが出来る。

 

なお、第1話の製作には2億円もの費用がかかったと噂されている。

このような作品を、数千円のBDを買うことで何度も視聴できるのはお得だと言える。

配信等で一度見てみて、一度では解釈しきれない何かを感じたのであれば、BDを買うことをお勧めしたい。

 

そして、トゲナシトゲアリのリアルライブを収録したBDも販売されている。

アニメファンにとっては、輪廻の理が特に楽しめる構成になっている。

 

なお、ガールズバンドクライの舞台川崎にあるチネチッタ川崎には、LIVE ZOUNDという特殊な音響設備で映像を楽しめるシアターがあり、2025年末から2026年の三が日にかけて、LIVE ZOUNDでガールズバンドクライの劇場版総集編と、1st Live 薄明の序奏の映像が上映される。

LIVE ZOUNDの音響設備は、空になった缶やポップコーンの容器を振動させるほどの音を出し、他の通常の劇場では味わえない体験を得られる。この年末年始は、ここでしか得られない栄養素を摂取するチャンスだ。

 

トゲナシトゲアリは野外フェスで爪痕を残した。

トゲナシトゲアリが放ったトゲが刺さった人間の1人として、2026年は私も爪痕を残せるような活動に取り組んでいきたいと思う。