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【読書メモ】「追われる国」の経済学―ポスト・グローバリズムの処方箋

対象

書名:「追われる国」の経済学―ポスト・グローバリズムの処方箋
著者:リチャード・クー www.amazon.co.jp

概要

リーマン・ショックを契機とした不景気に対する策として、先進諸国では量的金融緩和政策が採られた。 日本でも、日銀によってゼロ金利政策、マイナス金利政策が採られた。

この政策は、市場における資金の流通量を増やし、各経済主体の消費を刺激することによって、物価上昇を達成するものであったが、 日銀が期待していた水準までの物価上昇は達成出来ていない。

資金の流通量を増やせば物価上昇が起こる、と伝統的なマクロ経済学の教科書では説かれているが、現実はそうはならなかった。 この原因について切り込んだのが、本書の内容となっている。

要点

  • 量的金融緩和政策支持者の仮定 

    • 民間部門は常に利益の最大化を目的に活動を行う
    • 借り入れを行う主体は常に一定数存在している
  • 著者の主張

    • 民間部門は常に利益の最大化を目的に活動を行うわけではない
      • 債務が拡大している状況では、債務の縮小を優先的に行う
    • 金融緩和政策は市場に借り手が存在している時のみ有効
      • 時期を違えた金融緩和は局所的なバブルを生み出す懸念
        • 局所的なバブル発生~バブル崩壊によって債務を抱える負のループ
    • 借り手が存在していない時(借り手は債務縮小中)は財政刺激策が有効
      • 政府が最後の借り手となり社会的リターンの高いプロジェクトを推進するべき
    • 主流マクロ経済学は黄金時代の最中にいた先進国によって生まれた歴史の浅い学問であり、追われる時代に対応した理論不足

    • 経済成熟化の3段階

      • 都市化の時代
        • ルイスの転換点*1以前
        • 資本家による労働者の一方的な搾取
        • 労資間の所得格差の拡大
      • 黄金時代
        • ルイスの転換点以降
        • 労働者側での対資本家交渉力の獲得
        • 労働者の賃金上昇
        • 労資間の所得格差の縮小
      • 他国に追われる時代
        • 新興国への投資の拡大(投資リターンが低い)/国内投資の縮小(投資リターンが低い)
        • 国内労働者の賃金下降
        • 労資間の所得格差の拡大
        • 労働者間の所得格差の拡大
          • 新興国の労働者では出来ないことを可能な国内労働者のみ賃金上昇の恩恵を得られる
          • 終身雇用/年功序列賃金制度の消滅
            • 各自が主体的に生産性の向上を目指す必要あり

所感

労働者として

2020年現在の日本はまさに他国に追われる時代にいる。 つい先日、トヨタが終身雇用の廃止をほのめかしたように、
新卒で入った企業におんぶだっこで定年まで安泰、というような黄金時代のサラリーマンのような過ごし方は期待出来ない。

business.nikkei.com

この為、社会で何が必要とされ、この為の労働リソースは国内外でどの程度供給されているのか、
また自分が得意なこと/好きなことは何なのか、等を意識して、主体的に自身のキャリアを形成していく必要性を強く感じた。

個人投資家として

アメリカが追われる時代に入り、ヨーロッパが追われる時代に入り、日本が追われる時代に入り…という流れは今後も続く、
ともすれば流れが加速していくように思える。 しかしながら、各段階で発生するイベントについては共通する部分がある為、投資アイデアの一つとして念頭に置いておきたい。