対象
書名:ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話 著者:KPMGFAS、あずさ監査法人
ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話 (日本経済新聞出版)
- 発売日: 2017/11/24
- メディア: Kindle版
概要
機関投資家が企業価値を捉えているか、経営者はどのように企業価値向上の為の取り組みをしていけばいいのか、について書かれている本。
ROA、ROIC、ROEの数値の捉え方や、ROICを構成要素毎に分解していき、現場目線でのKPIと紐付ける流れが参考になった。
要点
出てくる用語
- DCF:将来発生するFCFをWACCで割り引いて現在価値を算出する手法
- FCF:企業活動の継続に必要な資本(運転資本、設備投資)を再投資した後の余剰資金
- WACC資本コスト:r株主資本コスト-g永久成長率=株主資本コスト×自己資本÷(自己資本+有利子負債) +負債コスト×(1-実効税率)×有利子負債÷(自己資本+有利子負債)
- 最低限クリアすべきROEやROICの目標値
- CAPMにおける株主資本コスト:リスクフリーレート+β×エクイティリスクプレミアム
- リスクフリーレート:無リスク利子率。国債利回りで代替。ゼロ金利・マイナス金利下では0%。先進国のインフレターゲットの2-3%に設定されるケースもある。企業側と投資家側で想定する値に乖離が出るケースもある。
- エクイティリスクプレミアム:大体5-6%
- 事業価値:FCF÷WACC
- 株主価値:株価
- ROA(Return on Asset)
- 分子を営業利益、経常利益にする場合は、対応する資本コストはWACC
- 分子を純利益にする場合は対応する資本コストは無い。ROAのデュポン分解をする時はこちらが一般的。
- ROIC(Return on Invested Capital):投下資本をB/Sの借方、貸方のどちらにするかで定義が異なる。非事業資産がB/Sにある場合、自己資本+有利子負債=運転資本+固定資産とならない為。
- 調達サイド:自己資本+有利子負債を投下資本とする場合。ROCE(Return on Capital Employed)と呼ぶこともある。
- 運用サイド:運転資本+固定資産を投下資本とする場合。運転資本のみを投下資本とする場合はROWC(Return on Working Capital)と呼ぶこともある。
- 分子はNOPAT(Net Operating Profit After Tax)を使用する
- ROICスプレッド:ROIC - WACCのこと。Economicスプレッドとも呼ぶ。ROIC > WACCの時、資本提供にとって価値創造がなされている。
EVA(Economic Value Added) or EP(Economic Profit):付加価値の規模を見る指標。
- EVA = NOPAT - 投下資本×WACC = (ROIC - WACC)×投下資本=ROICスプレッド×投下資本
残余利益:Equityスプレッドの規模を見る指標
ROEを向上による株主価値向上
フロー経営(売上高、利益に着目)の限界
- 資本市場に対する説明力不足
- 事業投資におけるPDCAサイクル不調
- フロー経営では設備投資後の効率性をCheckする観点が不足
- SBU(Strategic Business Unit)や事業部門ごとのROICを管理してCheckする
- 投資をしたのに営業利益率が増えなかった場合、ROICが下がるので気が付ける。
- B/Sへの意識の希薄さ
- フロー経営で見逃されていた余剰現預金や遊休資産が課題として認識され、B/Sのスリム化につながる。
- 資本市場に対する説明力不足
ROICの活用方法
- 事業ポートフォリオマネジメント
- 収益性(ROIC)と成長性の2軸で事業を分類する。事業が黒字であってもROIC > WACCを満たさないと改善対象となる。
- ROICツリー
- 事業ポートフォリオマネジメント
ROICを評価指標として使わない時 *事業の成長性重視ケースではEBITDAなどを使う
所感
株式投資に役立ちそうなところだけメモった。 この本には、会社でROIC経営を浸透させていく為の実践法も書かれており、マネジメント層の視点で見ても役に立ちそうな内容だった。